楕円チェーンリングは理論上より効率的なペダリングを実現すると言われています。
しかし、トッププロ選手の機材に目を向けてみると、未だ真円のチェーンリングを使用している選手は多くいます。効率的と言われる楕円ですが、必ずしも全てのライダーが使用しているわけではないのです。
なぜ、楕円と真円を使う選手に別れているのでしょうか。それは、レースシチュエーションや脚質によってそれぞれに向き不向きがあるからです。
今回は、楕円チェーンリングを〝使わない〟理由を解説するとともに、楕円が適したシチュエーションについて解説したいと思います。
「これから楕円チェーンリングを試してみよう」という方は、是非一読してください。もしかすると、楕円の構造があなたに合わないという可能性もあります。
ちなみに楕円チェーンリングがオススメな理由はコチラ→楕円チェーンリングって結局何がいいの?デメリットはある?
Contents
楕円と真円、実際どっちがいいの?
※ROTOR公式サイトより抜粋
楕円チェーンリングは理論上、効率的なペダリングを実現すると言われています。
しかし、楕円チェーンリングを使えば誰しもが速くなるというわけではなさそうです。
楕円の効果を発揮させるためには、その構造に適したペダリングが必要となります。ペダリング・ポジション・脚質はライダーによって様々であり、楕円構造が自分に合わなければ、かえって非効率なペダリングになってしまう可能性があるのです。
トッププロ選手の中でも、楕円を選択する選手と真円を選択する選手に別れています。例えば、かつてのチームLampre MERIDA(ランブレ・メリダ)には『ROTOR(ローター)』という楕円チェーンリングのメーカーがスポンサーとして付いていましたが、ロードレースでは選手の多くが「No-Q」という真円のモデルをチョイスしている選手が多くいました。
楕円と真円、実際どちらが良いのか――という問題に、はっきりと答えを出すことができないのです。
なぜ、楕円を選択しないのか―
変速性能の問題
楕円チェーンリングは非円形のため、フロントディレイラーの変速調整がシビアになります。少しでもワイヤーが伸びてしまったり、ディレイラーの調整がズレてしまうと、チェーンがアウターに持ち上がらないなどのトラブルが起きます。
また、フロントの変速時にトルクをかけてしまうと、タイミングによってはチェーン落ちしてしまうことがあります。楕円の場合、感覚的なコツを掴まなければうまくフロント変速ができないことが多いです。
レースなどにおいては、変速のタイミングによる一瞬のロスが致命傷になることは珍しくありません。チェーン落ちなどの機材トラブルは、自分のロスになるだけでなく、集団内において落車の引き金ともなります。
これらのことを嫌って、楕円チェーンリングを選択しない選手が多いのです。
スプリンターは楕円を使わない
トッププロの中でも、スプリンター系の選手は楕円ではなく真円のチェーンリングを使う傾向があります。
スプリント時においては、下死点までしっかりトルクをかけて踏み抜くペダリングになります。楕円の構造上、下死点からトルクが抜けてしまうため、かえってパワーロスに繋がってしまうのです。
立ち上がりのもがきやスプリントを重視する場合、下死点からもトルクを一定でかけられるという点で、真円の方が優れていると言えます。
ダンシング・トルク系のライダーには向かない
ダンシングを多用する選手、トルクをかけて思いギアを踏む選手なども、比較的楕円チェーンリングの構造を嫌う傾向にあります。
トルクをかけるペダリングは下死点までしっかりと体重を乗せることになります。よってスプリント時と同様、下死点からトルクが抜けてしまう楕円の構造がパワーロスに繋がってしまいます。
この場合も、真円の構造の方が適していると言えるでしょう。
こんな時に楕円は有効
TT(タイムトライアル)などに楕円は効果的
TT(タイムトライアル)などにおいて楕円チェーンリングは効果的です。
TTは基本的にシッティングで一定のケイデンスとパワーをひたすら維持する競技です。よって、楕円の効果を発揮しやすい競技と言えます。
ダニエル・マーティンというトップ選手は、TTとロードレースでそれぞれ、楕円と真円を使い分けていたことがあります。
楕円チェーリングは一定のペダリングにおいて乳酸がたまりにくくなり疲労軽減が見込めます。楕円においては、4時の位置でしっかりとトルクをかけ、下死点から引き足を使用するポイントではパワーをセーブして素早く通過するペダリングが理想なのです。これを繰り返すことで効率的ペダリングが実現するのです。
ギリギリのところでパワーを維持するTTでは有効なアイテムと言えるでしょう。
シッティング・高回転系のライダーに向いている
楕円チェーンリングは、基本的にシッティングでクルクルと脚を回す、高回転系のペダリングを駆使するライダーに向いています。
前述した通り、楕円チェーンリングはシッティングで一定のペダリングを行う際により効果を発揮します。楕円チェーンリングを使用してグランツールを制したクリス・フルームは、シッティング・高回転を一定で維持するペダリングを駆使していますよね。
楕円を使用する場合、4時の位置で踏み、下死点をより早く通過することを繰り返すことによって、必然的に高回転のペダリングになっていきます。これを一定で維持することによって効率的なペダリングが実現するのです。
ペダリングに慣れるまで乗り込んでみよう
楕円チェーンリングの効果を最大限引き出すためには、4時の位置で力をかけて、下死点から引き足を抜くようなペダリングが求められます。
このペダリングに慣れるまでは当然違和感が伴うでしょう。楕円に換えたからと言ってすぐに効果が表れるとは限らないのです。
楕円の効果を引き出すためには、まず1000km程乗り込んでみましょう。楕円特有のペダリング慣れていくことで、その効果を実感できるはずです。
しっかりと乗り込んだ上でそれでもメリットを感じられないようであれば、真円のチェーンリングに戻す選択が必要かもしれません。(少しもったいないですが…)
まとめ
- 楕円と真円、どちらが良いかは厳密に言い切れない。
- 楕円を使うと変速性能が悪くなる恐れがあり、レースでは致命傷となる場合がある。
- スプリンターやトルク系のライダーなど、下死点まて踏み込むペダリングに楕円は向いていない。
- TTなどシッティングで一定の回転を維持するペダリングに楕円は向いている。
- 楕円の効果を体感するには、ある程度乗り込んでペダリングに慣れる必要がある。
以上、楕円チェーンリングに向かないシチュエーションと、楕円の効果が発揮されるシチュエーションについてそれぞれ解説しました。楕円を検討している方は是非参考にしてください。
各メーカーの違いに関してはコチラの記事を参照ください→楕円チェーンリングのメーカーおすすめ3選―各メーカーの特徴も解説!!
ちなみに私のおススメはROTORのQ-RINGSです。