ロードバイクの〝速さ〟に直結する機材がタイヤです。バイクの進みやすさに関わる〝転がり抵抗〟はタイヤの性能で決まります。
そこで重要となるのが、タイヤの空気圧です。
〝転がり抵抗〟だけを考えれば、空気圧が高いほど抵抗は小さくなり、バイクは進みやすくなります。
また、ロードレースにおいては直進性能以外にも、エンデュランス性能、コーナリング時のグリップ力など様々な要因が〝速さ〟へと繋がります。
それらすべては、タイヤの空気圧調整によって発揮されるのです。
よって、プロのロード選手たちは、シチュエーションに合わせたシビアな空気圧調整を行っています。
今回はあなたの走りのレベルアップに直結する、タイヤの性能を十分に発揮させる為の空気圧調整について解説したいと思います。
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空気圧が高いほど〝速い〟という常識はもう古い
一昔前までは、空気圧が高いほど速くなると考えられてきました。
空気圧が高いことでタイヤが硬くなり、変形しにくくなることで、その分パワーロスが減少します。よって、地面にタイヤからのパワーがよりダイレクトに伝わり、バイクが進みやすくなるのです。ここでのパワーロスがいわゆる〝転がり抵抗〟ですね。
しかし、それは実験室という閉じた空間での話。
実際のロードレースでは、真っ平のキレイな路面がいつまでも続くわけではありません。外界の路面状況は常に変化しています。
外界の路面には必ず凹凸があります。その程度は刻一刻と変化しており、プロレベルのレースではその路面状況を見極めたコース取り、空気圧調整が必要となります。
この路面の凹凸とタイヤの空気圧による振動吸収性が、〝転がり抵抗〟に深く影響していると現在では考えられています。
タイヤの空気圧が高ければ高いほど、その振動吸収性能は低下します。故に、空気圧が高すぎると路面凹凸による衝撃を吸収しきれず、その分車体の上下振動が発生し、その振動エネルギーにパワーが奪われてしまうのです。
つまり、タイヤの空圧が高いほど〝速い〟という実験室の考え方が実走では適用できないのです。
空気圧調整によるエンデュランス性能の向上
近年の考え方では、〝転がり抵抗〟よりもむしろ、タイヤのエンデュランス性能(快適性)が重視される傾向にあります。この観点から、現在では空気圧を低めに設定するプロ選手は少なくありません。
実際、私が日本のプロ選手とトレーニングした時は、体重60kg前後であれば6.5~6.8気圧くらいで十分と言われました。
それは、25Cなどのより太いタイヤがロードレースの主流になりつつあるということにも関係があります。
例えば、23Cと25Cの太さのタイヤを比較して、後者の方が〝転がり抵抗〟が小さくなると言われています。しかしそれはごく数%の差に過ぎません。
25Cのメリットは〝転がり抵抗〟の軽減だけではないのです。
タイヤが太いことでエアボリュームを稼ぐことができるので、タイヤのクッション性が向上し、より高い振動吸収性能を発揮させることができます。
身体に伝わる振動を軽減させることで、疲労の蓄積を防ぐことができます。
プロのロード選手の場合、連日100kmを超えるトレーニングとレースを重ねていく為、如何に疲労の蓄積を抑え、ゴール前におけるパフォーマンス向上に繋げるかが重要になるのです。その為には、〝転がり抵抗〟を数%少なくするよりも、タイヤのエンデュランス性能(快適性)を高める方がより効果が見込めると考えられています。
昨今の勝利の考え方として、タイヤのみならず全ての機材面において〝快適性〟と〝路面追従性〟の両立が求められていると言えるでしょう。
一般のサイクリストにとっても、疲労軽減のメリットは無視できませんよね。
よって、現在では25C・28Cなど太めのタイヤが主流となり、かつ振動吸収性を考慮して空気圧をあまり高く設定しないという傾向にあります。
※空気圧が低すぎると、逆にタイヤの変形エネルギーが大きくなりすぎて、進まないタイヤになってしまいますのでバランスが重要です。
フレーム剛性に合わせた空気圧調整
フレームによって剛性はそれぞれ違います。自分のバイクの剛性に合わせて、タイヤの空気圧を調整することでよりパフォーマンスの向上が見込めます。
例えばフレーム剛性が高い場合、よりダイレクトに力が伝わり進みやすくなりますが、その分脚は疲労しやすくなります。
もしフレームの剛性に脚が耐えられていないと感じた時、空気圧を普段の数値から0.5気圧分ほど下げてタイヤを柔らかくすることで、剛性による疲労を和らげることができます。
その日の脚の調子や、長時間のライド中どうしても脚にキてしまった場合にもこの調整は有効です。
天候・路面・コースプロフィールに合わせたグリップ力の確保
雨で路面がウェットの場合や、テクニカルなコーナーや下りのポイントが多いコースレイアウトで走る場合には、タイヤのグリップ力を確保することが重要になります。
プロ選手は路面コンディションとコース、そして、使用するロードタイヤのグリップ性能を見極めて、タイヤの空気圧を設定していくのです。
空気圧を下げることでタイヤの接地面が広がり、より地面にグリップします。
よって、コーナリングスピードを稼ぎつつ、転倒を防ぐ為の空気圧調整が必要となるのです。
路面がウェットで滑りやすい場合は、当然空気圧を下げます。大胆に普段より1.0気圧ほど下げる選手もいます。雨のレースのスタート前、選手の様子を観察すると、バルブから空気を抜くプシュッという音が聞こえてくるでしょう。
また、路面に砂が浮いて滑りやすいポイントが多かったり、タイトなコーナーが続く場合は空気圧を若干下げることがあります。空気圧を下げることで路面追従性(レスポンス)を犠牲にすることになりますが、グリップ力の確保はその犠牲を差し引いてもレースにおいては重要なのです。
グリップを失ったことでで落車をして、ゴールまで辿り着けなければ何の意味もありません。選手はシビアな空気圧調整を行い、場合によっては低めの設定にすることが多くあります。
日本国内のトッププロチームである宇都宮ブリッツェンに所属する阿部嵩之選手は、26Cと太めのタイヤで6.0気圧前後に設定しています。阿部選手の体格からしてもかなり低めの数値です。自分が使用するタイヤの性質や好みによってもタイヤの空気圧はそれぞれ変わってきます。
参考 https://www.cyclesports.jp/articles/detail/62047
また、ヒルクライムレースなどタイヤのグリップによる落車の危険が比較的少ないレースにおいては、路面追従性(レスポンス)を重視して高めの空気圧に設定することが望ましいです。普段より+0.5~1.0気圧くらいで設定する選手が多いです。
一般のサイクリストにとって、タイヤのグリップ力を最大限引き出すことは困難でしょう。(※そもそも危険が伴う為、ギリギリを攻めることは推奨しません。) よって、まずは空気圧を高くし過ぎないことが大切です。
まとめ
- 実験室と違い、実際の路面状況は凹凸があり常に変化しいるので、「空気圧が高い=〝速い〟」というわけではない。
- 空気圧を低めにすることで、「エンデュランス性を向上=疲労軽減」を目指すことが昨今の主流の一つ。
- フレームの剛性に脚が耐えられないときは、空気圧を0.5気圧ほど下げると良い。
- 天候・路面状況・コースプロフィールによって、空気圧を調整して最適なグリップ力を確保することが重要。
- 最適な空気圧は人によって違い、経験値から導かれます。トライ&エラーが重要です。
以上、ロードバイクでの走行における空気圧調整の重要性を解説しました。シビアな調整はあくまでプロ基準で求められることですが、一般のサイクリストにとっても走りのレベルアップの為に実践して損はありません。是非参考にしてみて下さい。

