自分にピッタリのクランク長を追求すること…これは非常に深淵な問題と言えるでしょう。
実際、何を基準に長さを選択すれば良いのか、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。(筆者も未だに迷い続けています…)
体格から数値を求める一般的な公式は既に紹介されていますが、それはあくまで目安にすぎません。クランク長選びには体格のみならず、その人の脚質・ポジション・柔軟性など様々な要素を加味しなければならないのです。
また、自分に適していないクランクを使い続けることは怪我の原因にもつながります。
今回は、ライダーの個人差によってそれぞれに適したクランク長選びの基準を紹介したいと思います。
Contents
クランク長とは
どこからどこまでの長さのこと?
クランク長とは、クランクの中心にあるBB芯の中心からペダルを取り付けるねじ穴の中心までの長さを言います。単位は例えば「170mm」というようにミリを用いて表記するのが一般的です。
ロードバイクのクランクにはこの長さが2.5mm間隔で様々ラインナップされており、乗り手の体格やフレームサイズなどに合わせて適したクランク長を選ぶことが可能です。
シマノのクランク長ラインナップ
比較的日本で普及率の高いシマノ製のラインナップを一例として紹介します。
デュラエース FC-R9100→ 165 167.5 170 172.5 175 177.5 180 mm
アルテグラ FC-R8000→ 165 170 172.5 175 mm
105 FC-5800→ 165 170 172.5 175 mm
クランク長の確認方法
クランク裏面の先端付近に記載があります。
このクランクの場合、長さは172.5mmということになります。
クランク長を求める一般的な公式
クランク長は基本的に乗り手の身長や脚の長さに合わせて選びます。単純に考えると、「身長が高い・脚が長い=クランクは長いものを使う」、「身長が低い・脚が短い=クランクは短いものを使う」となるわけです。
以下にクランク長の数値を導くための一般的な公式を示しておきます。
身長の10分の1
例えば身長が170cmの場合、
クランク長=170÷10=17cm
=170mm
即ち、170mmのクランク長が適正ということになります。
股下×1.25+65
例えば股下が80cmの場合、
クランク長=80×1.25+65=165
=165mm
即ち、165mmのクランク長が適正ということになります。
身長説、股下説の矛盾…「身長の10分の1」を勧める理由
以上2つの公式を見て、あれ?と思った方は多いはず。実際に計算して見ると、この2つの算出方法でそれぞれ導き出される数値の間にズレがあることに気がつくはずです。
例えば身長170cmで股下77cmの場合、それぞれの公式で数値を求めると以下のようになります。
身長基準→170mm
股下基準→160~162.5mm
見ての通りかなりの開きがあります。そもそも普及率の高いシマノ製のクランクでもラインナップは165mmからです。
そこで、今回筆者は「身長の10分の1」公式をお勧めします。あくまで管見の範囲内ですが、身長が170cm前後のライダーは大体170mmを基準としてクランク長を選択している場合が多いです。
ちなみに、海外のGlobal Cycling Networkでは「身長の9.7%」の公式が推奨されています。
Global Cycling Network「Is Crank Length Important To Professional Cyclists?」
この動画では海外チームのプロ選手のクランク長も紹介しています。要チェックです。
基本数値の±2.5mmの範囲で選ぼう
以上に示した公式で求められるのはあくまでも目安となる基本数値です。どの長さが自分に適しているかは、やはり実際に異なる数値のクランク長を試して探っていくのが好ましいと言えます。
しかし、自身の体格の基準値から極端に離れたクランク長を選択することは怪我のリスクを高めます。まずは上記の公式で求めた基本数値±2.5mmの範囲で試していくと良いでしょう。
クランク長がもたらす効果
長いクランク
クランクアームが長ければその分トルクをかけやすくなります。これはテコの原理を考えればわかるでしょう。支点→力点の距離が遠ければ遠いほど、それだけ小さな力でより大きな仕事量を稼ぐことができます。
つまり、トルクをかけて重いギアを踏む場合は長いクランクが適していると言えるのです。
また、体重を乗せてトルクをかけやすくなるため、ダンシングがしやすくなるというメリットもあります。
低いケイデンスで山を登るトルク系のクライマー、ダンシングを多用するサイクリスト、重いギアをかけてアップダウンの道をグイグイ踏んでいくパワー係のサイクリストは比較的長いクランクを使うと良いでしょう。
短いクランク
クランクアームが短ければその分ペダルを回しやすくなります。これはクランクが短いことで脚の回転の周長が短くなるからです。周長が短い分、より高回転を維持することが容易になるのです。
高回転のペダリングを駆使するサイクリストや、高いケイデンスを一定で維持してスピードを保つTTマンは比較的短いクランクが適していると言えるでしょう。
クランクが短いことで股関節や膝の動きがより小さくなるため、怪我のリスクを軽減させることができます。
適正なサドル高を確保しようとする場合、クランクが短いとその分サドル高を上げる必要があります。
サドル高が上がることでハンドルとの落差をつけることができるため、より深いエアロポジションを取ることが可能となります。
プロの間でも特にTT系の選手は空力を重視して短いクランクを使用することが多いようです。
クランク長の個人差
身体の柔軟性によって適正は異なる
やはり、クランク長の適正には個人差が有ります。必ずしも公式で求めた基本数値がその人に当てはまるとは限りません。
例えば、身長170cmの人が「10分の1公式」から170mmのクランクを使用したとします。しかし、そのクランク長の可動域に耐えられる股関節・背中などの柔軟性がなければ、膝を痛めてしまう可能性があります。この場合、基本数値より短いクランクを使用することが好ましいということになるのです。
もしロードバイクで膝や股関節の痛みが出る場合は、今使っているクランクの長さを見直すことが解決につながる決め手となるかもしれません。
クランクが長いと膝が高い位置に来るため、お腹と股関節周りが窮屈になります。柔軟性が足りないとこれが怪我の原因に繋がります。
脚質・ポジションによって使い分ける
クランク長がもたらす効果については、既にそれぞれ解説しました。それらを参考にして、自分の脚質や理想とするポジションに合わせたクランク長を選択してください。
ちなみに、最近の研究ではクランク長が適正より極端に長い、または短い場合でも、ペダリングパワーの差は0.5パーセント程度しか生じないという結果が出ています。
参考論文Determinants of maximal cycling power: crank length, pedaling rate and pedal speed
この結果から、怪我をしない範囲であれば、自由にクランク長を選択してもペダリングの出力にほとんど差支えないと言えます。
女性はどうやってクランク長を選べばいいの?
男性に比べて体格の小さい女性の場合、クランク長選びに苦戦することが多いのではないでしょうか。
クランク長のラインナップもメーカーによって限られており、自ずと選択の幅は限られてきます。
ここで紹介するのは大宅陽子(おおやようこ)さんのブログ記事です。ヒルクライム系の女性ライダーですが、そのクランク選びの経緯がまとめられています。
大宅さんは身長161cmに対して170mmのクランクを使用しています。基準となる数値から考えればかなり長めです。しかし、身体に170mmを使うに値する柔軟性が備わっていれば問題ないということが証明されています。
また、クランクが長い分ハンドル位置を高くすることで、上半身がアップライトなポジションとなり、お腹・股関節回りの窮屈さをある程度解消することが可能です。
女性ライダーの方は是非参考にしてみて下さい。
まとめ
・適正なクランク長の基本数値を求める公式は、「身長の10分の1」or「股下×1.25+65」
・怪我をしないために、まずは公式で求めた基本数値±2.5mmの範囲で試していくと良い
・長いクランクはトルク系・ダンシングを多用するライダーに、短いクランクは高回転系・TT系のライダーに効果的
・クランク長には個人差があるため、公式で求めた基本数値を元に柔軟性・脚質を考慮して選択すると良い
・クランクが長い場合、ハンドル位置を高くすることで、お腹・股関節回りの窮屈さをある程度解消することが可能
以上、ロードバイクのクランク長選びについて解説しました。まずは体格と怪我を考慮しつつ、自分にピッタリのクランク長を探してみて下さい。
